第39話 　

柳巧美は、いつも自分にいじめられても黙っていた篠田初が反撃してくるとは思わず、怒りのあまりに口汚く罵り始めた。「この恥知らず！自分の姿を鏡で見たらどうなの？一家が離散し家族も死んだ疫病神が、どこがお兄ちゃんにふさわしいっていうの？離婚もせずにしがみついて、恥ずかしくないのか？」

　「離婚しないでいるからって何になるの？柔子姉さんのお腹はもうこんなに大きくなってるのよ。彼女がお兄ちゃんと結婚するのは決まっているの。離婚するかどうか、あなたが決められることじゃないわ」

　篠田初は淡々と答えた。「私が決められるかどうかはさておき、少なくともあなたには決められない」

　「お腹が大きくなったからって何だというの？私とあなたの兄が離婚届を出さない限り、私は正妻で、彼女は愛人。彼女のお腹の子どもは忌み子で、戸籍にも入れない」

　小林柔子はこの言葉に痛いところを突かれ、反論できずに困り果てたが、あざとく言った。「初さん、私を責めるのは構いませんが、私の子どもを侮辱するのはやめてください！」

　「私はあなたの子どもを侮辱しているわけじゃない。ただ事実を述べているだけ。愛人が産んだ子どもが忌み子でないなら、皇太子か何かだというの？」

　「私、私は......」

　小林柔子は言葉に詰まり、言い返すことができなかったが、なおもあざとく続けた。「昌平と私は本当に愛し合っているの。愛されていない方が第三者なんです」

　「柔子姉さん、彼女に話すことなんてないわ！」

　「こんな恥知らずな女には、直接手を出せばいいんだ！」

　柳巧美は歯ぎしりしながら叫び、篠田初の顔に向かって手を振り下ろそうとした。

　だが、その手がまだ空中にあるうちに、突然強い力でしっかりと掴まれた。

　「お前、誰だと思って......」

　柳巧美が言いかけたその時、相手の顔を見て、すぐに黙り込み、小動物のようにおとなしくなった。

　「景雄さん？」

　白川景雄は白い礼服を身にまとい、優雅で高貴な雰囲気を漂わせ、小説の中の白馬の王子のように、誰もが目を離せなくなるほど魅力的だった。

　「柳さん、何かおかしな薬でも飲んだのか？こんなに怒ってどうした？」

　白川景雄は微笑を浮かべながらも、鋭く危険な目つきで柳巧美を見つめた。「白川家の縄張りで騒ぎを起こして、どうなるか分かっているのか？」

　「ど、どう